(2024年9月更新)
国際結婚には、文化や生活習慣といったお互いの理解だけでなく、法的手続きや制度面での基本的な理解も重要です。
本記事では、台湾人との結婚を考えている方に向けて、必要な手続きや配偶者ビザの申請までを、行政書士事務所の視点から丁寧に解説します。これを読めば、きっと複雑な手続きもスムーズに進められるでしょう。
日本と台湾では、戸籍制度や手続きの仕組みが異なるため、しっかりとした知識が必要です。
台湾では、戸籍が日本の戸籍と住民票を合わせたような役割を持ち、印鑑制度も存在します。
身分の登録と住民登録(転籍登記)を併せ持っている戸籍制度です。日本の戸籍制度とは少し異なっています。
違いを理解し、円滑な結婚手続きを進めるために、本ガイドでは、台湾の方との結婚や日本での配偶者ビザ申請を専門とするフィラール行政書士事務所が、必要な手続きを丁寧に解説します。
婚姻要件具備証明書とは
台湾の方が日本人と結婚して日本に住む場合、日本人配偶者などの在留資格を取得する必要があります。
配偶者ビザとよく呼ばれますが、このビザを取得するには、双方の国で婚姻が法律上成立していなければなりません。
年齢とか再婚禁止期間といった婚姻が可能な法的な条件は国により異なります。
婚姻手続きでとても大事な書類
国際結婚の手続きにおいて、最初に取得を考えなければならない書類が「婚姻要件具備証明書」です。
この書類に馴染みがない方も多いかもしれません。実は結婚手続きを進める上で非常に重要な書類です。
そもそも「婚姻要件具備証明書」とは何か、疑問に思う方もいるでしょう。日本人同士の婚姻の場合、必要な書類は主に婚姻届と、本籍地が異なる場合には戸籍謄本の提出だけです。
しかし、国際結婚となると手続きが少し複雑になります。
日本人同士であれば、戸籍謄本を見ればその方が婚姻の要件を満たしているかどうかが役所で簡単に確認できますが、外国人が婚姻届を持って役所に行った場合、役所の担当者は「この方が結婚可能かどうかどう判断すればいいのだろう?」と戸惑うかもしれません。
そこで登場するのが「婚姻要件具備証明書」です。
この証明書は、国際結婚手続きにおいて、婚姻の要件を満たしていることを公的に証明するための書類です。
具体的には、その国の法律に基づいて婚姻可能であることを示すものです。
たとえば日本人の場合、「独身であって、かつ婚姻能力を有し相手方と結婚するにつき、日本国法上何等の法律的障害のない」ことを証明しています。
この書類は、国際結婚を進める上で不可欠な要素であり、これを持っていなければ婚姻手続きが進まないこともあります。
ですので、国際結婚を考えている方は、まずこの「婚姻要件具備証明書」を取得することを優先的に考える必要があります。
台湾の方との国際結婚の手続き
台湾と日本には大使館が存在しません。大使館に相当する機関が、お互いの国に設けられています。
台北駐日経済文化代表処について
中華民国(台湾)の日本における 外交の窓口が台北駐日経済文化代表処という機関です。大使館に相当するところです。また日本の台湾にある機関も日本大使館ではなく、日本台湾交流協会と呼ばれる機関です。
所在地 | ||
・日本の大使館に相当する機関 | 公益財団法人日本台湾交流協会 | 台北
高雄 |
・台湾の大使館に相当する機関 | 台北駐日経済文化代表処・弁事処・分処 | 東京
大阪 福岡 札幌 横浜 那覇 |
それぞれの代表処と弁事処と分処は管轄している都道府県は次の通りです。
台北駐日経済文化代表処 | 東京都、新潟県、長野県や山梨県など東日本の各県(神奈川県、静岡県除く) |
台北駐日経済文化代表処 横浜分処 | 神奈川県と静岡県 |
台北駐大阪経済文化弁事処 | 大阪府、京都府、富山県、岐阜県、愛知県以西の四国ふくむ西日本各県(九州、沖縄県のぞく) |
台北駐大阪経済文化弁事処 福岡分処 | 九州各県 |
台北駐日経済文化代表処 札幌分処 | 北海道 |
台北駐日経済文化代表処那覇分処 | 沖縄県 |
台湾で婚姻手続きを先に進める場合
日本の方の婚姻要件具備証明書の準備を中心に考えると理解しやすいです。
手続きの流れ
①日本人の戸籍謄本を市町村役場で取得
本籍地で戸籍謄本を取得します。郵送による依頼で取得できます。
②台湾で「婚姻要件具備証明書」を入手
台湾に渡航して、日本台湾交流協会台北事務所または高雄事務所にて日本人の「婚姻要件具備証明書」を取得、中国語への翻訳してもらいます。
用意するもの
|
③ 「婚姻要件具備証明書」の認証
台湾の外交部領事事務局で認証を受けます。認証には約2日かかります。
④婚姻届けの提出
お二人そろって台湾の市役所に提出します。
用意するもの
婚姻届のことです。
|
提出したら結婚証明書「婚姻証書」を取得します。
⑤日本側での婚姻手続き
日本の役所で婚姻手続きを行います。婚姻届と次の書類を提出します。
用意するもの
婚姻手続済で配偶者が記載のもの。日本語訳をつけます。
台湾市役所で発行した結婚証明書です。日本語訳をつけます。
|
これで手続きは完了です。
手続きのまとめ(台湾が先の国際結婚手続き) |
①日本人の戸籍謄本を取得 (市区町村役場) ➁日本人の婚姻要件具備証明書を取得(日本台湾交流協会台北事務所または高雄事務所:台湾) ③日本人の婚姻要件具備証明書を認証(台湾の外交部領事事務局 :台湾) ④婚姻届けの提出 (市役所に提出 :台湾)⇒☆台湾側の婚姻成立 ⑤日本側の婚姻届け(市区町村役場:日本)⇒☆日本側の婚姻成立 |
日本で婚姻手続きを先に進める場合
台湾の方の婚姻要件具備証明書が必要です。この書類の準備を中心に考えると理解しやすいと思います。日本から先に進める方が比較的スムーズになるでしょう。
手続きの流れ
①台湾の戸籍謄本を取得
日本側での婚姻届と一緒に提出する婚姻要件具備証明書を取得するために台湾の方の戸籍謄本を取得します。台湾は戸籍制度があります。戸籍は戸政事務所というところで入手します。日本人が直接いっても取得できません。
方法は2つあります。
(1) 台湾人の配偶者が現地で取得する
(2) 台湾人の配偶者が代理人に取得してもらう
親戚でも友人でも構いませんが、日本でいう「委任状」のようなイメージの「授権証」が必要です。
②台湾の方の婚姻要件具備証明書を入手
台北駐日経済文化代表処へ行き申請します。
用意するもの
台湾の方 ・パスポート ・戸籍謄本(①で取得したもの) |
③ 日本側の婚姻届けの提出
市町村役場へ婚姻届けを提出します
用意するもの
台湾の方
台湾戸籍は全戸(現戸全戸)のものを用意します。 日本の方
|
④台湾側での婚姻手続き
日本にある代表処で手続きを行うかあるいは夫婦で台湾に行き市役所へ提出します。代理での提出も可能です。
用意するもの
反映されるまで、しばらくかかります。
この台湾の戸籍謄本は台湾の方が未婚の状態になっている戸籍謄本です。
代表処で申請します。「中文姓名声明書」とは台湾の戸籍謄本にのせるための中国語の氏名です。
台湾の方は姓名がはいっているもの 日本人の方は実印です。 |
以上で手続きが完了です。婚姻証書を取得します。
手続きのまとめ(日本が先の国際結婚手続き) |
①台湾人の戸籍謄本を取得(戸政事務所:台湾) ➁台湾人の婚姻要件具備証明書を取得(台北駐日経済文化代表処:台湾) ③日本で婚姻届けを提出(市区町村役場:日本)⇒☆日本側の婚姻成立 ④台湾での婚姻手続き(代表処:日本 もしくは市役所:台湾)⇒☆台湾側の婚姻成立 |
法令などの改正による手続きの変更で、必要書類が急遽変更になったり、両国の提出先によって必要書類が異なる場合があります。資料を集める前に市町村役場、代表処、協会にご確認することが大事です。
その後の準部が効率的に進みます。
台湾の方との国際結婚をされて、お二人で日本で過ごす場合は在留のための在留資格の取得が必要となります。
台湾での結婚した証明「婚姻証書」と日本での結婚したことの記載がある「戸籍謄本」がそろったらいよいよ配偶者ビザの申請となります。
配偶者ビザの申請について
大事なことは2つです。一つ目は「偽装結婚」でないことの証明。
二つ目は日本でお二人が末永く結婚生活を維持できることを家計面で証明すること、つまり収入面の証明です。
そのほかにもいくつかありますが、この2つはとても重要なポイントです。配偶者ビザの申請の時に、これらを証明するための書類をしっかりと用意する必要があります。
短期入国から配偶者ビザへの在留資格変更許可申請について
短期滞在(査証免除)で入国している台湾の方が、すでに結婚している、もしくは日本滞在中に結婚が成立した場合、その滞在資格を配偶者ビザに変更できる可能性があります。
以下は当事務所での配偶者ビザのサポートの流れの紹介です。よろしければご検討してみてください。
国際結婚ビザ | フィラール行政書士事務所 (firstbase.info)
日本で暮らす台湾の方の現状
日本で暮らす台湾の方の人口
令和5年6月末時点で、60,220人の台湾の方が日本で暮らしています。 これは、令和元年の64,773人をピークに一時的に減少していたものの、4年ぶりに6万人台に回復した数値です (出入国在留管理庁「令和5年6月末現在における在留外国人数について」より引用)。 |
都市別に見ると、全体の57%が首都圏に集中しており、西日本では大阪と兵庫を合わせて14%の台湾人が在住しています。これにより、台湾の方々は主に日本の都市部に定住していることがわかります。
・2022年12末 台湾人の都市別在留人口
単位:人 | |
総数 | 57,294 |
東京都 | 20,123 |
大阪府 | 6,070 |
神奈川県 | 5,630 |
千葉県 | 3,627 |
埼玉県 | 3,243 |
兵庫県 | 2,089 |
愛知県 | 2,030 |
(出入国在留管理庁 在留外国人統計データより 弊所にて表を作成)
こちらの記事もお勧め
台湾人との国際結婚:申請書類(現戸全戸)について
[この記事の執筆者]
行政書士 山川鬪志 フィラール行政書士事務所 代表 専門業務:ビザ(在留資格)申請、帰化申請 保有資格:申請取次行政書士 |
https://www.moj.go.jp/isa/index.html