(2024年6月更新)
御婚約おめでとうございます!
配偶者ビザ、そしてその先の永住許可申請・帰化といったビザの手続きの業務を専門におこなっている東京・新宿2丁目のフィラール行政書士事務所がタイ人との国際結婚の手続きについて解説します。
タイ人との国際結婚手続きで大変なところ
タイ人との婚姻手続きで大変なのは、
- 手続きのために役所などから集める書類が多いこと
- 婚姻要件具備証明書が発行されないこと
- 書類の翻訳と翻訳書類の認証手続きが複雑なこと
などがあります。
ややこしくて、面倒だなぁと思うかもしれません。たしかにその通りです。専門家が要点をなるべくわかりやすく解説しますので、一つ一つ順番に進めてみませんか。
婚姻についてのタイと日本の法律
国際結婚を法的に成立させるために両国の婚姻に関する法律を問題なくクリアしているかを確認することは大事です。
どちらの国の法律が適用されるのでしょうか。
これは、詳しく説明すると、とても難しくなり混乱してしまうかもしれません。要点だけのべると、それぞれ本人の国の法律で結婚の法的な条件をクリアしているか、あるいはどちらか厳しい方の法律でクリアしているか、確認すべき項目によって異なります。
- 婚姻可能年齢
日本では婚姻可能年齢は、従来女性が16歳でしたが2022年4月1日施行の改正民法で婚姻可能年齢は男性、女性ともに18歳に統一されました。
タイで法律では
「両性ともに17歳以上の場合効力を有する」(民商法典第 5巻「親族」 1435条)となっています。
この場合日本人は日本の法律をタイ人はタイの法律で確認します。日本人が17歳ですと結婚が法的に認められません。
- 再婚待期期間(再婚禁止期間)
日本は女性の再婚禁止期間が6カ月から100日に短縮されました。前婚の解消または取消の日から起算して100日を経過するまでが再婚禁止期間です。前婚の解消または取消の日に妊娠していなかった場合または前婚の解消または取消後に出産した場合は、再婚禁止期間の適用を受けません。
タイの法律では、女性は前婚の終了から301日間を経過しないと再婚できないが、同期間に子どもが出生した場合、(中略)医師により発行された妊娠していないことを証する証明書を有する場合に、婚姻を許可する裁判所命令があればこの限りではない。(民商法典第 5巻「親族」1453条)となっていて少し厳しくなります。
この場合の日数は、条件が厳しい方を取ります。したがい日本人女性の場合はタイの法律の条件に従います。
他にも婚姻の法律上での確認すべき要件はありますが、この二つが一般的におさえておく大事なところです。
タイ側では婚姻要件具備証明書がない
国際結婚の手続きで、まず考えなくてはならない必要な書類が「婚姻要件具備証明書」です。何それ。と疑問に思う方もいると思います。お互いが日本人の場合は、婚姻届と本籍地が異なる方の戸籍謄本の提出を行う程度で完了します。
国際結婚となると少し話が異なってきます。国内の場合は戸籍謄本をみれば、結婚の要件が役所の方にも容易に判断がつきますが、いきなり外国の方が婚姻届をもって役所に行っても「何この人」をなるわけです。もちろん、そんなことは決して言わないと思いますが。
国際結婚手続きにおいて、これを公的に証明するのが「婚姻要件具備証明書」なのです。つまり婚姻要件具備証明書とは、法律上の婚姻の条件を満たしていることを証明するものです。
日本人の婚姻要件具備証明書には「独身であって、かつ婚姻能力を有し相手方と結婚するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明する」といった記載があります。
ところがタイ国はタイ人の婚姻要件具備証明書を発行していません。したがい法律上の婚姻要件をみたしていることを他の書類で日本側に提出することになります。これが書類を集めるうえで、面倒な作業となるかもしれません。
タイ人と日本人との国際結婚の手続きのながれ
国際結婚の進め方は日本で先に結婚を進める方法と、タイで先に結婚を行う方法があります。
どちらから結婚手続きをすすめると良いかという問い合わせがよく受けます。お相手の国によってもことなりますが、タイ人との国際結婚ですと日本人が日本に住んでいる場合、日本から先に結婚を進めていきます。
日本から先に結婚手続きを進める
日本から国際結婚を進める場合の流れをざっくりと見てみましょう。
- 日本から先に結婚を進める場合の流れ
①タイ人の必要書類を現地であつめる⇒②日本のタイ大使館・領事館で認証⇒③市町村役場で婚姻届⇒④タイ国での婚姻手続き
といった流れになります。
タイ人の方あるいはタイ人の方の両親などの方が書類を集めることとなりますが、必要な書類を正確に伝えないともう一度集め直しとなり、とても手間がかかることになります。
ではそれぞれを確認していきます。
①タイ人の必要書類を現地であつめる
タイ人の必要書類は現地で集めます。
タイ人の必要な書類
タイ市役所で発行されたもの。タイ外務省国籍認証課で認証済みで、認証後3ヶ月以内のもの
氏名変更されたことがある方
過去に離婚歴がある方 タイ外務省国籍認証課で認証済みの書類
女性側がタイ国籍の方で離婚後310日経過していない場合で、離婚後100日以上310日未満の方
タイ人が20歳未満のばあい、父母の同意書必要 |
以上が日本側での結婚届を出すときにタイ人についての必要な書類です。
タイの書類については、現地のタイ国外務省での認証が必要です。また日本語への翻訳文を用意します。日本語文は認証不要です。
②日本のタイ国の大使館・領事館でさらに認証を受ける
タイの外務省で認証を受けた「独身証明書」は日本にあるタイ国の大使館・領事館で認証を受けます。
③日本の市町村役場へ婚姻届を提出
市町村役場によって必要となる書類が違う場合があります。したがい準備の段階で早めに市町村役場に必要な書類を確認することをお勧めいたします。
先ほどのタイ人の必要書類にあわせて日本人の方の必要書類は次の通りです。
日本人の方
本籍地が居住地と異なる場合 |
届出が受理されると日本人の方は新しい戸籍が作られて、戸籍謄本の記載事項欄にタイ人の配偶者との婚姻したことが記載されます。
これで日本側での婚姻手続きが完了して日本側の婚姻が成立します。
日本で結婚が成立したら次はタイ国での結婚です。国際結婚は必ずそれぞれの国で結婚を法的に成立する必要があります。どちらか片方の国での手続きで終わると、もう一方の国では、その国の方は独身のままとなってしまいます。
④タイ国での婚姻手続
タイ国側に報告的婚姻届を行います。
先に結婚した国の手続きを創設的婚姻届と言います。後の国の結婚手続きは報告的婚姻届となります。報告的婚姻届は創設的婚姻届よりも少し簡略化されていることが多いです。
タイの場合ですと報告的婚姻届は、在日本タイ大使館では受付ていません。そのためタイ人配偶者が住んでいる役場に婚姻届を提出します。
- 手続きの流れ
(1)日本で結婚が成立した書類を準備 ⇒(2)日本にあるタイ国大使館での手続き⇒(3)タイ国内で報告的婚姻届出を行う
ではステップごとに手順を説明いたします。
(1)日本での結婚が成立した書類を準備
日本の市区町村の役所に婚姻届を提出して、だいたい1~2週間程度で日本人の戸籍に配偶者の外国人の名前が記載されます。その戸籍謄本を入手します。
(2)日本にあるタイ国大使館・領事館での手続き
タイの大使館・領事館では、3つの手続きがあります。
その1 婚姻の記載がある戸籍謄本の領事認証
日本で婚姻が成立したら、タイ国の役所にて「家族身分登録証(婚姻)」の申請が必要です。「家族身分登録証(婚姻)」の申請が報告的婚姻届の手続きとなります。
用意する書類
戸籍謄本を英訳した書類を作成します。 |
- 公証人役場での認証
英訳した翻訳者の署名認証を行います。日本にある公証人役場で戸籍謄本の英訳した書類の認証手続きです。
- 法務局で公証人押印証明の取得
公証人役場で署名認証を受けた書類に、公証人が所属する(地方)法務局で公証人押印証明を受けます。
- 外務省での公印確認証明の取得
外務省で公印確認の証明を受けます。
- 日本にあるタイ国大使館で領事部での認証取得
タイ国大使館・領事館へ認証済みの「戸籍謄本の英訳文・戸籍謄本」を持ち込み領事認証を受けます。
この時に「戸籍謄本のタイ語に訳した書類」を用意して同時に領事認証を受けます。タイ語への書類は大使館の書式にしたがって翻訳文書を作成します。
これで、タイ国の役所に提出できる日本の戸籍謄本に関しての書類が出来上がりました。
その2 委任状の作成手続き
お二人ともタイに行き手続きを行うときは委任状の手続きは不要です。タイ国にお住まいの親族に「家族身分登録証(婚姻)」の代理申請を行う場合などの手続きです。
タイ国大使館での領事認証の時に同時に委任状作成手続きとそのほかの書類の手続きも行います。
この委任状はタイ国の役場で親族などが代理で申請を行うための委任状です。
次に記載している必要書類をそろえて日本にあるタイ国大使館・領事館で委任状作成を申請します。
必要書類
氏名を変更したことがある方
|
その3 そのほかの申請手続き
次の2つの申請も同時に行います。タイ国に行き行う場合は大使館での申請は不要です。
- 姓名変更に関する同意書の申請
日本人の姓をなのる場合の申請書です。日本人がタイの役場に行かない場合は大使館で申請します。
- 女性の敬称に関する証明書の申請
女性の敬称(ミス・ミセス)に関する証明書です。
(3) タイ国で報告的手続き
大使館・領事館で認証した書類をタイ国の外務省でさらに認証を受けます。
認証を受ける書類
「戸籍謄本と英訳文(認証済)」とタイ大使館で認証をうけた「タイ語訳文」 |
- 報告的婚姻届
そのあとタイの役所で「家族身分登録証(婚姻)」の申請を行います。
また次の手続きも進めていきます。
- 結婚後の姓名変更
登録証が発行されたら、タイの役所でタイ人の住所登録証を結婚後の姓名に変える手続きを行います。
- 国民身分証明書とパスポートの申請
タイの役所でタイ人の新しい国民身分証明書の申請を行います。タイの外務省でパスポートの申請を行います。
以上でタイ側での婚姻届の報告的手続きが完了です。
これで婚姻手続きが両国で完了できました。
タイで先に結婚手続をおこなう
タイで先に結婚手続きを行う場合です。タイ国でビザを取得して生活している日本人はこのパターンで進めます。
- 手続きの流れ
手続きの順番は以下の通りとなります。
①在タイ日本大使館で「結婚資格宣言書」・「婚姻要件具備証明書」を取得⇒②郡役場で婚姻届けを提出し「婚姻登録証」を入手⇒③日本側での婚姻手続きを行う
①「結婚資格宣言書」・「婚姻要件具備証明書」を取得
タイ郡役場に婚姻届けを提出するために「結婚資格宣言書」・「婚姻要件具備証明書」を在タイ日本大使館で発行してもらいます。
必要な書類
日本人の方
申請前3ヶ月以内のもの 婚姻歴がある方は離婚事項(又は死亡事項)が記載されている前の戸籍も用意
申請前3ヶ月以内のもの タイ居住の方は日本大使館で保管の「在留届」で現住所を確認
申請前3ヶ月以内のもの 会社発行及び自分で作成した在職証明書については、公証人役場 にて宣誓認証を受け、その後地方法務局で所属法務局長の認証を受ける。公的機関が発行した在職証明書の場合は、上記公証の手続きは不要
申請前3ヶ月以内のもの 市区町村役場発行のもの 源泉徴収票の場合は、公証人役場での認証とそのあと地方法務局 の認証を受ける。
原本及び身分事項ページのコピー1部 タイ人の方
取得している方のみ
婚姻歴がある場合
氏名の変更がある場合
婚姻歴はないが子供がいる場合 |
申請時は代理人可能、交付時は日本人配偶者が必ず行きます。
タイ語に翻訳の上、タイ国外務省領事局国籍認証課の認証を受けます。
②タイ側での婚姻届提出
郡役場で婚姻届けを行い「婚姻登録証」を入手します。
「結婚資格宣言書」・「独身証明書(婚姻要件具備証明書)」をもって婚姻届出を行います。
届出後、婚姻登録証を発行してもらいます。
③日本側での婚姻手続き
婚姻届けを日本側に提出します。
タイの日本大使館で婚姻手続きを行うかあるいは日本に戻り市町村役場で婚姻手続きを行います。
必要な書類
タイの日本大使館で届出を行う場合
婚姻後の本籍地を現在の本籍以外のところにする場合はもう1部必要
原本及びコピー1部と和訳文 1部 日本の市区町村役場に届出の場合
本籍地役場に届出をする場合は不要
|
※市町村役場で用意すべき資料が異なる場合があります。事前準備の段階で該当市町村にお問い合わせ・確認することを強くお勧めいたします。
これで日本側の婚姻手続きが完了です。
配偶者ビザの申請にむかって
いかがでしたでしょうか。
婚姻の手続きは時間がかかります。役所へ申請について慣れていない方が行うと、一日仕事になったり、二度手間になったりと、労力のわりに、ずいぶん効率がわるくなるかもしれませんね。また、外国の役所の手続きに思った以上に時間がかかることも、とても心細く、とてもストレスを感じてしまうかもしれません。またお相手の方の協力がないと進みませんね。
「もうつかれた」
正直何度もそう思うかもしれません。
あともう少しです。
日本でお二人で暮らすとなると、さらに手続きを進めることが必要です。配偶者ビザの取得であったり、場合によってはすでにお持ちのビザの変更だったりするかもしれません。
婚姻の手続きよりも、もっと手間と時間がかかるかもしれません。またお二人の色々な事情によってもお悩み事や心配なことがあるかもしれません。「一人で悩まない」ことはとても大切だと思います。
専門家が傍にいたら不安な思いが軽くなることは可能かもしれません。思い切って手続きをお任せするのも良いと思います。
以下は配偶者ビザについて当事務所のサポートのご案内です。
よろしければご覧になってください。
[この記事の執筆者]
行政書士 山川鬪志 フィラール行政書士事務所 代表 専門業務:ビザ(在留資格)申請、帰化申請 保有資格:申請取次行政書士 |
https://www.moj.go.jp/isa/index.html