日本で国際結婚を行うカップルの中で、中国人と日本人の組み合わせは毎年約1万3千組に達し、相手国として中国が最も多いです。次に多いのが韓国・朝鮮人、フィリピン人との組み合わせで、それぞれ約5千組程度ですが、中国人とのカップル数はその2倍以上にのぼり、圧倒的に多いことがわかります。
中国には、日本と同じように戸籍制度があります。戸籍制度は東アジア特有の制度で、以前は韓国にも戸籍制度はありました。現在世界中で戸籍制度があるのは、中国、日本、台湾のみです。
日本で先に結婚手続きを行えば、それだけで結婚はお互いの国で有効と考えられがちですが、中国側で、特別な手続きが必要です。中国人配偶者の戸口簿(hukou)の婚姻状況を「未婚」から「既婚」に変更する手続きです。
この手続きを行わないままでいると、将来的にさまざまな問題が発生する可能性があります。
本記事では、中国の戸籍制度の解説で理解をふかめ、日本で結婚した中国人が戸口簿を適切に変更するための手順を解説し、手続きを行わなかった場合のリスクについても触れていきます。
- 中国人と日本人の国際結婚:
平成12年 平成17年 平成19年 平成20年 平成21年 10,762 12,659 12,942 13,223 13,719
(厚生省 人口動態統計年報 主要統計表より当事務所でデータを加工)
中国人との国際結婚ってどうなるの?法律の話をわかりやすく解説!
日本で先に国際結婚を行った場合は、中国側でも有効な結婚となるためにあらためて中国側に結婚の届出や婚姻の登録を行う必要がありません。
日本にある中国大使館に行って改めて婚姻の届出を行うようなことはありません。日本での結婚は中国でも法的に有効です。
しかし、中国での婚姻登録や届出が不要であっても、戸口簿に反映させるための手続きが不可欠です。
戸口簿に婚姻状況を反映させることで、中国国内での法的な問題をトラブル回避することも可能となります。
たとえば、中国国内で財産の分配や相続手続きを行う際、戸口簿に婚姻状況が記載されていないと、手続きが複雑になり、時間がかかる可能性があります。
婚姻状況を変更しておくことは、法的なトラブルを未然に防ぐ重要なステップなのです。
中国の戸口簿とは?
戸口簿とは、中国国内で個人の身分や住所を登録する公式な文書で、中国社会において非常に重要な役割を果たします。戸口簿には、氏名、生年月日、住所、婚姻状況などの基本情報が記載されており、さまざまな公的手続きにおいて使用されます。
婚姻状況の記載は、特に重要です。未婚のままでいると、将来的に問題が生じることがあります。したがって、日本で結婚した場合でも、中国国内での婚姻状況を正しく反映させることが重要です。
「戸口簿」の読み方は「ここうぼ」と読みます。日本の戸籍と住民票が一緒になったような書類をイメージするとよいでしょう。中国語では戸は家を意味しており、口は人のことです。
戸口(hukou)登記管理制度
戸口簿に関する手続き面について解説します。
戸口簿の種類
都市戸籍と 農村戸籍の2種類があります。
中国語 | 日本語 |
城镇戸口 | 都市戸籍 |
农村戸口 | 農村戸籍 |
戸籍の管理単位
戸籍は家単位で管理されるのですが、家庭戸と集団戸に分かれます。
集団戸とは、家族関係がない他人が、会社の寮、寄宿舎、寺院などで集団生活を行っている場合戸籍の登記機関は集団戸として登記を行います。
戸籍制度の構成
中国の「戸口簿」とは、住んでいる人の情報を記録・管理するためのシステムで、「常住人口登記制度」に基づいています。この制度には、以下の3つの書類で構成されています。
1.常住人口登記表:個人ごとの情報を記入する書類です。この書類に記入された情報は、申請者が申告した内容を基に、担当者が審査し、署名と専用印を押すことで法的効力を持ちます。
「常住人口登記表」があると、その人の家庭は、どんな家族構成となっているかが証明されます。
2.戸口登記簿:常住人口登記表を基に、家族ごとにまとめた書類で、登記機関が保存します。これには、家族の住所や結婚状況などが記録されています。
3.居民戸口簿:戸口登記簿の内容を基にして、家ごとに発行される書類です。法に基づいて常住戸籍登記を行ったことを証明するもので、家で大切に保管する必要があります。
これらの書類は、その人の身分や家族関係を法律的に証明するために使われます。簡単に言うと、「戸口簿」とは、家族の住所や結婚状況を記録しておくための大事な書類です。
まとめ
項目 | 説明 |
常住人口登記表 | 個人ごとの情報を記入する書類。申請者が申告した内容を基に審査され、署名と専用印で法的効力を持つ。 |
戸口登記簿 | 常住人口登記表を基に、家族ごとにまとめた書類。登記機関が保存。家族の住所や結婚状況などを記録。 |
居民戸口簿 | 戸口登記簿の内容を基に、家ごとに対して発行される書類。常住戸籍登記を証明するもので、家で大切に保管する必要がある。 |
記載内容
記載内容は法令で定められています。常住人口登記表は一人一表形式で、34の登記項目が設定されています。
項目は次のとおりとなっています。
1、戸別;2、戸主の氏名;3、戸主との関係;4、氏名;5、性別;6、別名;7、民族;8、出生年月日;9、保護者;10、保護関係;11、出生地;12、公民出生証明書発行日;13、住所;14、市内(県内)の他の住所;15、籍貫;16、宗教信仰;17、公民身分証明書番号;18、住民身分証明書発行日;19、学歴;20、婚姻状況;21、兵役状況;22、身長;23、血液型;24、職業;25、勤務先;26、いつ、なぜ、どこから市内(県内)に移転したか;27、いつ、なぜ、どこから本住所に移転したか;28、いつ、なぜ、どこに転出したか;29、いつ、なぜ、戸籍を抹消したか;30、申請者の署名;31、担当者の署名;32、登記日;33、登記事項の変更および訂正記録;34、記録事項。 |
中国人との国際結婚で日本から先に婚姻手続きを行った場合は、この記載項目、上の20番にある婚姻状況を、次の通りに変更します。
・未婚⇒已婚に変更 |
・婚姻状況欄 未婚
・婚姻状況欄 既婚
婚姻状況変更の具体的手続き
戸口簿の婚姻状況を変更するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。以下はその基本的な流れです。
日本において、すでに結婚した証明書の取得:
日本で結婚したことを証明するための書類を用意します。
婚姻届を提出した役所から、結婚を行った証明書として「婚姻届受理証明書」を取得します。
外務省アポスティーユの取得:
日本の外務省で、取得した「婚姻届受理証明書」にアポスティーユを付けます。
アポスティーユは、1枚の書類で「婚姻届受理証明書」にホチキス止めされて青い割り印がおされます。
中国の役所での手続き:
アポスティーユを受けた「婚姻届受理証明書」を持って、中国人配偶者は、自分の戸籍がある公安局派出所に行き、戸口簿の婚姻状況を「既婚」に変更します。日本語から中国語への翻訳文も求められる可能性もありますので(多くの場合は求められます)事前に派出所に確認します。
中国人と国際結婚手続と準備する書類@新宿区の行政書士が手続を解説 | フィラール行政書士事務所 (firstbase.info)
[この記事の執筆者]
行政書士 山川鬪志 フィラール行政書士事務所 代表 専門業務:ビザ(在留資格)申請、帰化許可申請 保有資格:申請取次行政書士 認定コンプライアンス・オフィサー |
https://www.moj.go.jp/isa/index.html