連れ親ビザ(特定活動告示外):年老いた親を日本に呼ぶことは可能か

長く日本で暮らし、永住許可も得て、日々は安定していても……毎日のふとした瞬間、母国に暮らすご高齢の親御様のことが心に浮かんできます。

「日本で一緒に過ごせたら、どんなに安心だろう。」
想いが募るのも、誰もが抱く、自然な願いです。

実際、当事務所にも時々こんなご相談が寄せられます。

「両親を日本に呼びたいのですが…。日本国籍を私は取得しました。日本人ですから問題ないですよね。収入も資産も十分にありますから、日本に迷惑をかけることは無いです。」

こうしたお考えは、とてもよく分かります。
しかし現行の在留資格制度では、「親を呼ぶ」という明確に示したカテゴリーは存在せず、子供がたとえ日本国籍を取得していても、永住ビザをもっていても、必ずしも許可が下りるわけではないのです。

では、どのような場合に可能性が開けるのか──。
この記事では、一つの可能性としての「特定活動(告示外)」について、実務経験に基づき、分かりやすくご説明いたします。

 

老親を日本に呼び寄せる

たとえ日本に帰化し、安定した生活を送っていても、海外に暮らすご両親を呼び寄せるには、ご両親のビザが必要です。
この「親を呼ぶビザ」の取得は、とても難しい申請のひとつです。

理由は二つあります。
一つは、日本が急速に高齢化しており、政策として海外からさらに高齢の方を受け入れる余裕が殆どないこと。
もう一つは、親との同居を前提に認められているビザが、特別な場合を除き「高度人材ビザ」に限られていることです。

とはいえ、まったく不可能というわけではありません。
個々の事情を細かく検討し、理由があると認められた場合には、日本で暮らすことが許可されることがあります。
これが「特定活動(告示外)」というビザの一種、老親扶養ビザです。

「告示外」とは、法律の告示に書かれていない特別な活動のこと。過去に法務大臣が認めた事例を基に、今後もその活動を認めることが適切と判断された場合に適用されます。

そのぶん審査では裁量が広く、その分ハードルも高い制度です。

「特定活動(連れ親)」(特定活動告示外)のビザとは

このビザが認められれば、親と日本で共に暮らすことが可能となります。
また、親は国民健康保険に加入できるため、医療費の自己負担を大きく軽減できるメリットがあります。
しかしながら、日本の医療費財政への負担増が懸念されているため、許可審査は年々厳しくなっているのが現状です。

前提条件

このビザの前提は、親が日本で子の扶養を受けて生活することにあります。
親が日本で収入や報酬を得る活動を行うことは認められていません。

要件について

審査は、「親の要件」と「呼び寄せる子の要件」に分けて行われます。

親の要件

  • 高齢であること
    65歳以下は、ほぼ許可は見込めず、一般的に70歳以上が許可の目安とされています。

  • 配偶者がいないこと
    配偶者がいる場合は、別居していて今後も同居が見込めない特別な事情が必要です。

  • 他に扶養できる適切な親族がいないこと
    母国や第三国に兄弟姉妹や親族がいる場合、許可は難しくなります。

  • 日本で扶養する必要性があること
    病気などの理由で呼び寄せるケースが多いですが、その場合「日本でしか治療できない病気かどうか」がポイントとなります。特定活動(医療滞在)ビザの方ではないかと言われるかもしれません。必要性について、病気でなくても構いません。

特定活動(医療滞在)の場合は国民健康保険は加入できません。

国民健康保険
特定活動(医療滞在) 特定活動告示25号 ×
特定活動(老親扶養) 告示外活動

呼び寄せる子の要件

  • 一定以上の収入があること
    呼び寄せる子本人の収入に加え、配偶者の収入も含めて考慮されます。

  • 納税義務を適切に果たしていること

要件を満たさない場合

すべての要件を満たしていなくても、人道的な配慮が認められる特別な事情があれば、例外的に許可される場合があります。

申請方法

親が短期滞在ビザ(親族訪問)で日本に入国し、無事入国した後に入国管理局へ在留資格変更許可申請を行います。
したがって、特定活動(告示外)老親扶養ビザの申請準備は、母国にいる段階から進めておくことが重要です。

申請のポイント

申請時に提出する理由書は非常に重要な書類です。
なぜ親を日本に呼び寄せる必要があるのか、またなぜ監護者は日本にいる子でなければならないのか、具体的に丁寧に説明することが求められます。

許可の可否は個別に判断されるため、要件を満たしていても不許可となる場合や、逆に満たしていなくても人道上の特別な事情により許可されるケースもあります。

「特定活動(連れ親)」(告示外特定活動)申請の流れ

このビザは、法令で定められた在留資格のカテゴリーには含まれていない、いわゆる「告示外」の特別な扱いとなります。
そのため、直接「在留資格認定証明書」の交付申請をして親御様を日本に呼び寄せることはできません。
まずは短期滞在ビザで日本に入国していただき、その後に日本国内で在留資格の変更申請を入管に対して行う流れとなります。

① 短期滞在ビザの取得

まずは、親御様に短期滞在ビザ(親族訪問)を取得していただくことからスタートします。
申請は親御様の母国にある日本大使館や領事館で行いますが、実際には大使館指定の代理申請機関をご利用いただくケースが多いのが現状です。

なお、申請に必要な理由書は、次のステップで「短期滞在」から「特定活動(連れ親)」ビザへの変更申請時にも重要な書類となります。
より的確で説得力のある内容に仕上げるため、弊所での作成を強くおすすめしております。


② 日本入国

短期滞在ビザの許可が下りましたら、親御様は晴れて日本へ入国できます。


③ 短期滞在ビザから老親扶養ビザへの在留資格変更申請

日本入国後は、できるだけ速やかに入国管理局へ在留資格変更許可申請を行っていただきます。
これは「短期滞在」から「特定活動(連れ親)」ビザへの変更を意味します。

なお、申請前には必ず入管の審査部門で窓口相談を行い、申請の適否について確認を受けることが必要です。

申請書類の中でも特に重要なのが詳細な理由書です。
なぜ親御様を日本で扶養する必要があるのかを、誠実かつ具体的に説明することが合否のカギとなります。
この理由書は、経験豊富な行政書士のサポートを受けることで、審査官の心に響くものに仕上げることが可能です。


④ 老親扶養ビザ許可・不許可の通知

審査結果の通知には数ヶ月かかる場合もあります。
許可されれば、親御様は日本で安心して長期にわたり暮らしていただけます。

FAQ

Q1. 親が70歳未満ですが、特定活動(連れ親)ビザは申請できますか?

A:
年齢要件は厳しく、70歳未満ではほぼ許可されません。ただし、特別な事情があれば例外があるため、一度ご相談ください。


Q2. 親に配偶者がいますが、別居中です。ビザ申請は可能ですか?

A:
配偶者がいる場合でも、別居かつ今後も同居が難しい状況であれば申請可能性がありますが、許可は非常に厳しいため専門家のサポートをおすすめします。


Q3. 日本で働いている子供の収入基準はどのくらいですか?

A:
呼び寄せる親を扶養できる安定した収入が必要です。具体的な金額は申請時の状況や地域によりますが、家族の人数に親を足してだいたい70万をかけてください。例えば4人家族なら親をいれて5人で計算します。5人×70万円=350万円。

年収300万円〜500万円くらいが目安となるのではないでしょうか。


Q4. 申請準備で特に気をつけるポイントは何ですか?

A:
申請理由書で「なぜ日本で扶養が必要か」を明確に説明することが重要です。また、親の健康状態や扶養者の収入証明書を正確に準備してください。

サポートをご希望の方へ(無料相談のご案内)

サポートをご検討の方で、状況に応じた無料診断・ご相談をご希望の方は、下記のお問い合わせフォームから簡単にお申し込みいただけます。
お申込みの際は、お手数ですが、親御様の年齢、ご呼び寄せのご理由、ご親族の有無についても併せてご記入ください。
ご記入内容をもとに、より的確なご案内を差し上げます。

 

フィラール行政書士事務所 代表 行政書士 山川鬪志の顔写真 [この記事の執筆者]

行政書士 山川鬪志

フィラール行政書士事務所 代表

日本行政書士会連合会 東京都行政書士会

新宿支部所属

登録番号 19082576

専門業務:ビザ(在留資格)申請、帰化許可申請

保有資格:申請取次行政書士

認定コンプライアンス・オフィサー

 

※上記記事の質問は、制度の解説のために、質問の内容や国名などを変更しています。行政書士は法律により、守秘義務がありますので安心してご相談してください。

 

https://www.moj.go.jp/

https://www.moj.go.jp/isa/index.html

 

 

 

 

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